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相続時精算課税制度について教えてください

 

相続時精算課税とは、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税をすることです。相続時精算課税には次のようなメリットがあります。
・子供1人につき2,500万円まで贈与税がかからない
・贈与時の価額が基準となるため、贈与時から相続時に財産価値が上がった場合は節税となる
・不動産などの収益物件は贈与後の資産から子供が利益を受けることができ、相続財産の増大を防ぐことができる
相続時精算課税のデメリットは次の通りです。
・贈与時よりも相続時の方が評価額の低い場合、結果的に納税負担額が多くなる。
・暦年課税ができなくなる(110万円の基礎控除額の適用がなくなる)。
贈与時の要件は以下の通りです。
①親は65歳以上、子は20歳以上であること(ただし、住宅取得等資金の場合は親の年齢に制限を設けない)
②贈与税の申告期間中(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで)に、贈与税の申告と合わせて相続時精算課税選択届出書を提出
③贈与者毎に課税価格を算定
④特別控除額は2,500万円
⑤2,500万円を超える分の税率は20%
⑥相続時精算課税選択は翌年以降も継続され、撤回はできない(暦年贈与は適用できなくなる)
平成24年に4,000万円の贈与を受けた場合の税額は、(4,000万円-2,500万円)×20%=300万円となり、その後いつ相続することになってもこれ以降の贈与財産は相続財産となります。平成27年に60万円の贈与を受けた場合の税額は、60万円×20%=12万円となります。通常の暦年課税制度による贈与であれば、年110万円以下の贈与は申告の必要もありませんが、相続時精算課税制度を受けると申告が必要となります。

事業承継と税金について教えてください

 

生前に出資持分を無償で移転するには、移転時における出資持分の評価を相続税評価額により行う必要があります。医療法人は配当ができないため法人内部に利益が蓄積し、設立当初に出資した金額よりもかなり高い評価となります。したがって、一度に出資持分を贈与することになるとかなりの税金が発生することが考えられるので、移転する際にはあらかじめ評価を下げる対策をしましょう。また、売買で子に譲渡するということも考えられますが、売買価額は相続税評価額以上でなければ課税上問題が生じますので、贈与にせよ、売買にせよ出資持分の相続税評価額をよく理解しておく必要があります。なお、評価額を引き下げる方法としては役員の退職金等、多額の経費を支払うことにより財産の減少を図る方法が考えられます。
相続により移転する場合は、出資持分の評価は相続税評価額により評価することになります。相続税評価額は相続税法における「取引相場のない株式」に準じて評価しますが、評価方法には「原則的評価方法」と「特例的評価方法」があります。「原則的評価方法」は「類似業種批准価額方式」・「純資産価額方式」・両者を組み合わせる「折衷方式」の3つがあり、会社規模に応じて評価することになります。また医療法人では配当ができないため、配当を基準にして評価額を算定する「特例的評価方法」は適用されません。
贈与税の基礎控除は年間110万円と定められているため、毎年110万円までなら課税されずに資産を贈与していくことが可能です。それによって相続財産は毎年確実に減少し、いずれ課される相続税も減らすことができます。ただし相続発生から3年間遡り、その間に贈与された資産は相続財産に加算されることになっており、贈与にあたって納付していた税金がある場合は贈与税額控除という形で相続税額から差し引かれます。
平成15年より、20歲以上の子が65歳以上の親から贈与を受けた際に、所定の届出書を出すことで贈与税の課税価格から最大2,500万円を控除できる制度が利用できるようになりました(相続時精算課税)。この制度は通常の生前贈与とは違い、贈与した者が死亡した場合、死亡した日から3年を超える分についても過去に贈与した財産を相続財産に加算し、すでに納付した贈与税額を相続税額から差し引くことになります(精算制度)。納付済みの贈与税額が相続税額よりも多い場合には、還付を受けることが可能です。この制度を利用すると、相続財産に加算する贈与財産を相続時の評価額ではなく贈与を受けた時の評価額で計算するため、相続時に贈与時よりも評価額が上昇していた場合は節税効果が得られます。ただし、評価額が下落していた場合には逆効果となるので、どの財産をこの制度を利用して生前贈与するかが重要なポイントです。

出資持分の相続対策について教えてください

 

一般的に出資持分の評価は高額となる場合が多く、後継者含め相続人に対しての相続税の影響が大きくなるため、出資持分のある医療法人の理事長にとって出資持分の後継者への承継は重要な課題です。したがって、後継者含め相続人の負担する相続税がどれくらいの金額になるのかを事前に把握し、相続税対策を長期的に検討することが大切です。理事長個人の相続財産・債務の全体像を把握した上で、相続税納税資金の有無やその必要額を確認し、後継者含め相続人へどのように財産を分割するのかを検討したり、事前確認をおこなったりします。
相続財産は相続税評価額によって評価しますが、一定の要件を満たした土地である場合は「小規模宅地についての相続税の課税価格の計算の特例」という制度により、最高80%の評価減を適用できます。また、理事長からの医療法人への貸付金(医療法人にとっては借入金)は理事長個人の相続税財産となり、出資持分は次期後継者が承継していくと考えられるので、理事長個人の相続財産のうち出資持分がどれくらいの評価額になるかを把握することは重要です。最後に、相続税納税資金の確保、後継者以外の相続人に対する分割財産を確保できるのか事前確認をしましょう。
医療法人の理事長の相続を考えた場合、医療法人の出資持分は理事長の相続税財産のうち最も重要な財産のひとつです。その評価は相続時点での評価額となりますが、医療法人は配当金を出すことが法律上禁止されているため、長期間利益が出ている法人は法人内部に利益が留保し、出資持分の評価が設立当初に出資した金額を大きく上回ることがあります。そして、出資持分の評価が高額になり、後継者に医業承継財産が集中した場合には、出資持分は換金性がないため次期後継者となる相続人の納税資金が不足することも考えられます。したがって、次期後継者へのスムーズな事業承継を行うためには、まずは現状における医療法人の出資持分の評価をして、次期後継者に与える相続税の負担がどれだけの金額になるのかをシミュレーションしましょう。
出資持分が高額になっている場合、後継者には多額の納税が発生することが想定されます。したがって、事前に出資持分の評価の引下げを図り、持分の一部を後継者に移転させることによって相続財産自体を理事長から切り離すことや、どのようにして納税資金を確保できるのかを検討することが大切です。出資持分の評価の引下げで代表的な方法としては、理事長の勇退による退職金の支払が考えられます。退職金を支払った時等、多額の経費が発生する時には法人の純資産が減少するため持分の評価は下がります。そのタイミングで出資持分を後継者に移転するとよいでしょう。移転の方法としては譲渡と贈与の2つがあります。納税資金の確保において、すでに後継者が医療法人の理事等である場合には、不相当に高額な役員報酬とならない範囲で、ある程度将来の納税資金を意識した役員報酬を設定しましょう。その他には生命保険を活用して、理事長に相続が発生した際に医療法人が遺族(後継者)に支給する死亡退職金を納税資金とする方法などもあります。

出資持ち分の払戻し請求について教えてください

 

厚生労働省が公表しているモデル定款によると、持分の定めのある医療法人に限り、出資社員が退社する場合には、その出資額に応じて出資持分の返還を請求できることとなっています。出資持分を払い戻す際には「時価」が基準となりますが、「時価」は一般的に、「売買実例価額」や「相続税評価額」などをもとに計算します。ただし、定款において具体な定めがある場合は(払戻価額は出資額を限度とするなど)定款の定めが優先されます。退社した場合、その払戻金額は設立当初に出資した金額がそのまま戻ってくるわけではなく、退社時点で医療法人全体の出資持分を時価評価した上で払い戻されます。例えば、法人設立時に100万円の出資をして出資持分の時価評価が1,000万円であった場合は、退社にともなう払戻金額(1,000万円)-設立当初の出資金額(100万円)=配当所得(900万円)となります。配当所得は所得税における総合課税の対象となるので、給与所得等の他の所得と合算して所得税・住民税が課税され、最高50%の超過累進課税が適用されます。
医療法人の収益が高く保有する資産の含み益が多くなる、過去からの乗余金の蓄積が増えるというのは好ましいことのように思われますが、退社する社員へ払戻さなければならない出資金のことを考えると、一般的な時価評価に従って払戻し以外の方法も検討しておく必要があります。例えば、医療法人の設立時に1口1万円で出資された持分が、含み益や剰余金が蓄積されることにより払戻時にはその10倍、20倍、時には100倍の評価額に跳ね上がっていることもあります。そこで、一般的な時価評価ではなくあらかじめ定款で、退職時には実際に支払った出資額によって計算すると定めておくこともできます。それが出資額限度法人であり、社員が死亡した際の社員持分の相続税評価額の時価評価といった煩わしい作業からも解放されます。
出資額限度法人にも問題点がないわけではなく、例えば、一般の医療法人の大半は同族社員で運営されています。法人税法上、同族会社の扱いを受ける医療法人が定款を変更して出資額限度法人に移行したのちに社員が退社した場合、払い込んだ出資金の範囲内の払戻金に対して課税はなく、医療法人側にも受贈益課税は課されません。しかし、社員の死亡により相続人が出資および社員としての地位を相続した場合は、他の同族社員へのみなし贈与として課税対象となりますので注意しましょう。

医療法人の出資金評価について教えてください

 

出資金も一般法人の株式と同様で、税務上は「取引相場のない株式」に該当し相続税の課税対象となります。つまり、相続の際には相続税評価額で算定し、その時点での時価を算出します。しかし、基本的には税金を払った後の利益が蓄積されて内部留保が厚くなるほど評価額は増えていきます。例えば、理事長が出資金5,000万で事業を開始し税金を払った後の利益800万が2年蓄積されると、相続税評価のもととなる純資産価額(法人の正味財産、相続税評価はこれだけではないが)は5,000万から6,600万になります。これを10年続けると純資産価額は5,000万が1億3,000万円になります。つまり、利益を出し蓄積していくほど相続財産が増えていきますし、この出資金は前述したように「取引相場のない株式」であり簡単に換金できません。出資金の評価額を下げるポイントは、以下のように医療法人の純資産価額を引き下げることです。いずれの方法も、理事長が退職を計画した早い段階から検討して試算することが大切です。
・土地、建物等を取得する
不動産の相続税評価額は売買時価より低いことが通常であり、土地、建物の取得価額と相続税評価額との違いに注目し、その乖離を利用する方法をとります。銀行借入を行った場合は借入利息が増加し、建物を購入した場合は建物の償却費が増加するなど、収益性も低下して大幅な評価減も期待できます。ただし、出資金の評価上、課税期間3年前に取得した土地及び建物については、通常の取得価額で評価することになっているので、乖離の効果を享受できるのは3年経過後となります。
・役員退職金の活用
理事長をご長男に譲ることにより、在職期間や法人への貢献度、類似法人の支給状況等を参考に退職する理事長へ退職金を支給することも有効です。役員退職金を損金算入することによって、出資金の評価額を下げることが可能です。
・生命保険の活用
後継者である長男を被保険者として、医療法人が契約者や受取人、保険料負担者である生命保険へ加入します。生命保険契約は解約返戻金の額をもって評価額としますが、解約返戻金は通常、支払保険料よりも少なくなるため純資産評価額を下げる効果があります。

帳簿書類等の保存期間について説明してください

 

医療法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(以下「書類」、帳簿と併せて「帳簿書類」)を、その事業年度の確定申告書の提出期限から7年間保存しなければなりません。また、法人が取引情報の授受を電磁的方式によっておこなう電子取引をした場合には、原則的にその電磁的記録(電子データ)をその事業年度の確定申告書の提出期限から7年間保存する必要があります。ただし、その電磁的記録を出力した紙によって保存しているときには電磁的記録を保存する必要はありません。保存すべき帳簿には、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあり、また、書類には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
帳簿書類の保存方法は原則的に紙によるものなので、電子計算機で作成した帳簿書類についても、原則として電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要があります。ただし、保存期間の最後の2年間に当たる6年目及び7年目の帳簿書類(一定の書類については最後の4年間)は、一定の要件を満たすマイクロフィルムにより保存することができます。なお、マイクロフィルムによる保存をする場合には、一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダまたはマイクロフィルムリーダプリンタを設置する必要があります。自己が電磁的記録により最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものは、紙による保存によらずサーバ・DVD・CD等に記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができますが、電磁的記録による保存をおこなう場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出して承認を受けなければなりません。また、この申請書は備え付けを開始する日の3ヶ月前の日までに提出することが決められています。保存すべき書類のうち、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、計算や整理または決算に関して作成されたその他の書類、取引の相手方から受け取った契約書、領収書等及び自己の作成したこれらの写し、これ以外の一定の書類については紙による保存だけでなく、スキャナ読取りの電磁的記録による保存をすることもできます。なお、参考欠損金の繰越控除の適用を受ける場合に限っては、帳簿書類等の保存期間は9年となります。法人が電子取引をした場合には、その電子取引に係る電磁的記録を一定の要件を満たす方法により保存する必要があります。

医療法人の税務調査について説明してください

 

税務調査は、申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、申告内容に誤りが認められた場合や申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、是正を求めるものです。税務調査は以下のような手順でおこなわれますが、従来からの運用を踏まえて、税務調査手続が国税通則法において法定化されています。この改正は、平成25年1月1日以後に新たに納税者に対して開始する税務調査について適用されます。医療法人化する場合、個人事業で使用していた財産は、税務上も医療法上も財産価値のあるもののみ引き継ぐことが可能です。価値がないと判断されたものは引継ぎを否認されることもあります。
(1)事前通知
税務調査に際しては、原則的に、納税者に対して調査の開始日時・開始場所・調査対象・税目・調査対象期間などを事前に通知します。その際、税務代理を委任された税理士に対しても同様に通知します。なお、合理的な理由がある場合には、調査日時の変更の協議を求めることができますが、税務署等が保有する情報から、事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、または調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、通知せずに税務調査をおこなうことがあります。
(2) 質問検査等
税務調査の際には、質問検査権に基づく質問に対して正確に回答し、調査担当者の求めに応じて帳簿などを提示または提出しなければなりません。質問事項に対し偽りの回答をした場合や検査を拒否した場合、または正当な理由がなく提示若しくは提出の要求に応じない場合、偽りの記載をした帳簿書類の提示・提出をした場合などについては、法律に罰則の定めがあります。また、質問検査権行使の一環として、調査担当者が帳簿書類などの提示または提出の要求をできることが法律上明確化されています。調査担当者は、税務調査において必要がある場合には、納税者の承諾を得た上で提出された帳簿害類などを預かることがありますが、その際には預り証が交付されます(預かる必要がなくなった場合は速やかに返還される)。なお、税務調査の調査担当者は、調査の際に身分証明書と質問検査章を携行し、これらを提示して自らの身分と氏名を明らかにするので、調査の際には確認しておきましょう。
(3) 取引先等への調査
税務調査において必要がある場合には、取引先などに対し質問又は検査等を行うことがあります。
(4) 調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨
税務調査において申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)を説明され、修正申告や期限後申告(以下「修正申告等」)を勧奨されます。この場合は原則として修正申告等を行うこととなります。
(5) 更正又は決定
修正申告等の勧奨に応じない場合は、税務署長が更正または決定の処分をおこない、更正または決定の通知書が送られてきます。なお、税務署長が更正または決定の処分を行うことができるのは、原則として法定申告期限から5年間です。
(6) 更正または決定をすべきと認められない場合の通知
税務調査の結果や申告内容に誤りが認められない場合や、申告義務がないと認められる場合はその旨が書面で通知されます。
(7) 再調査
修正申告・更正または決定をすべきと認められない場合の通知が行われた後でも、税務調査の対象とした期間について、新たに得られた情報に照らし非違があると認められるときは、改めて税務調査を行うことがあります。
最近は少なくなりましたが、医療業界は他業界と比べるとリベートや贈与などが多いです。特に多額の金銭が絡む設備の拡充などの場合には、パソコンや医療機器といったものが贈与されることもあります。数年前には、透析関連機器導入に際し、業者が附属設備の工事を無料でおこなっていたことが発覚し、透析実施病院と透析材料業者が集中的に調査を受けたこともあります。材料の供給業者と設備提供業者の間に整合性があれば、材料仕入価格の一部として否認されるかどうかは微妙ですが、役員へのパソコン等の備品贈与などがあると個人的使用に供するものとして否認されることもあります。そのため、医療機器や備品については定期的に棚卸しを実施し、業者から無償提供してもらった資産については合理的な説明ができるようにしておきましょう。近年では、親族役員の報酬や給与について指摘されるケースが増えており、親族役員に関しては、業務内容や勤務形態などが同ランクである他の職員の給与等と比べて合理性があることを説明できるようにするべきです。特に医療機関の場合は、報酬を受ける親族役員が看護師など直接業務に関連する資格を有しているかどうかは報酬の目安となります。
レセプトの発生から入金までの流れは、まず、診療行為をおこない翌月10日にレセプト請求、次に、翌々月下旬に入金および査定による入金の減額をおこない、そして、過誤分の訂正と再請求をおこないます。税務調査で問題にされることが多いのが、査定による減額の処理です。決算時に未収入金をいくら計上すべきかについては、減額となっても決算時には再請求できる可能’性があるため、原則的に、そもそものレセプト請求額で未収を計算して減額となったものも含めて計上しておきます。
社会保険診療以外にも、市町村の健康診断や労災保険、自賠實保険などの収入がありますが、市町村及び自賠責保険については特に留意が必要です。まず、市町村からの受託業務については請求項目が多く、入金のタイミングも長期になる場合があります。また、自賠責保険についても請求後6ヶ月以上経過するものも少なくないため、未収の計上漏れを指摘されることが多い項目です。決算時には請求管理簿のチェックを実施しましょう。
申告書を提出した後に、所得金額や税額等を実際より多く申告していたことに気付いたときには、「更正の請求」という手続により訂正を求めることが可能です。更正の請求書が提出された場合、税務調査によりその内容を検討して納め過ぎの税金があると認められたときには、税務署が「減額の更正」をおこなって納め過ぎの税金が還付されます。従来は1年でしたが、「更正の請求」ができる期間が法定申告期限から5年に延長されています(平成23年度税制改正)。例えば、調査の際には見つからなかった書類が後日見つかり、当初申告の内容が正しいことを証明できることになったとき等は、5年以内なら更正の請求ができます。ただし、これは法定申告期限が平成23年12月2日以後の国税に限り適用されます。平成23年12月1日以前に法定申告期限を迎える国税で、更正の請求の期限を過ぎた課税期間については、増額更正ができる期間内(5年以内)に「更正の申出書」を提出すれば、調査によりその内容の検討をして、納め過ぎの税金があると認められた場合に減額の更正をおこないます。また、税務調査等により税金の納付不足が指摘されて修正申告書を提出した場合、税務調査後に誤りが見つかったとしても従来は当初申告から1年経過後は更正の請求が不可能でしたが、請求期間が延長されたことにともなって調査官が修正申告の勧奨を行う際に、「不服申立てはできないが更正の請求はできることを説明し書面も交付しなければならない」こととなりました。そのため、税務調査に従って修正申告をしても再度検討した結果に誤りがあった場合には、原則5年間さかのぼって更正の請求をすることができます。

医療法人の消費税について説明してください

 

新たに設立した法人が、「課税期間の基準期間」における課税売上高が1,000万円以下の場合には、消費税の納税義務が免除されます。この基準期間とは、法人の場合は原則的に前々事業年度のことを指します。したがって、新たに設立された法人のように基準期間がない場合には、原則として消費税の納税義務が免除されます。また、2期目以降は特定期間の課税売上高でも判定されますが、個人事業者がいわゆる法人成りによって新たな法人を設立したようなときは、個人当時の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高に含まれません。これは医療法人の非営利性の徹底の観点から、施行後に認可申請を行い設立される社団医療法人は、出資持分のある医療法人が設立できないこととされているためです(平成19年4月施行の改正医療法)。これにともない、持分の定めのない医療法人の活動の原資となる資金の調達手段として、基金への拠出を募集することが可能となっています。持分の定めのない社団医療法人の事業年度開始の日における基金の額は、消費税法の定める「資本金の額又は出資の金額」に該当しないので、1期目の消費税は免除されます。
課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を事業年度開始の前日までに提出している法人は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる「簡易課税制度」の適用を受けることが可能です。簡易課税制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合としますが、この一定割合である「みなし仕入率」は以下のように事業の種類によって異なります。なお、医療法人の場合は概ね50%となりますが、物品の販売等については80%、不要な機器の売却は60%と、異なるみなし仕入率を適用することになります。医療法人の場合、消費税の課税対象とならない社会保険診療などがあること、経費のうちに人件費など消費税の対象とならない金額の占める割合が大きいことなどから、簡易課税制度を選択する法人が多いです。
みなし仕入率
第一種事業(卸売業)    90%
第二種事業(小売業)    80%
第三種事業(製造業等)   70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
医療法人の場合、健康診断、自由診療などの消費税対象となる取引と、社会保険医療や労災など消費税の対象外の取引があります。消費税の対象とならないものは、健康保険法・国民健康保険法・老人保健法などに基づいて行われる社会保険医療給付金、身体障害者福祉法・生活保護法などに基づいて行われる公費負担医療給付金、労働者災害補懷保険法など基づいて行われる医療給付金、助産にかかる医療などの診療収入です。一方、予防接種委託料、診断書作成料、健康診断、人間ドックなどの自由診療収入は消費税がかかる売上となります。また医業収入以外の収入についても、自動販売機の売上手数料や公衆電話の回収料金等の売上などは消費税がかかります。その他、医療法人で使用していた固定資産を売却した場合の固定資産売却額なども、消費税の対象となります。消費税は一般課税・簡易課税どちらの制度を利用するのが有利か、といった基本的な点も含めて事前シミュレーションが重要なので、どの取引が消費税課税対象となるのかきちんと確認しましょう。
設備投資が多額にあった場合などは課税仕入が大きくなるため、免税事業者であっても課税事業者を選択することにより消費税の還付を受けることができます。新たに事業を開始した法人が課税事業者になるには、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出することで、その課税期間から課税事業者となります。この届出書を提出した事業者は事業廃止の場合を除き、原則的に課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることは不可能です。免税事業者である設立初年度から課税事業者になるかどうかについては慎重に考えましょう。
平成25年1月1日以後に開始する年または事業年度については、基準期間の課税売上高が1,000万円以下(または基準期間がない場合)であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合は当課税期間から課額事業者となります(特定期間とは、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間)。なお、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。たとえ設立2年目の原則免税事業者の期間であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えそうな場合は、一般課税または簡易課税のどちらが有利かをシミュレーションしてあらかじめ届出を出しておくことも必要です。持分の定めのない社団医療法人の場合、原則として設立初年度の消費税は免税となりますが、多額の設備投資を行う場合や特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合など、課税事業者になる可能性もあります。消費税は将来的な事業計画も含め、どのやり方が有利なのか事前に税理士等と相談し、シミュレーションしましょう。

医療法人の交際費について説明してください

 

交際費とは、交際費、接待費、機密費その他費用とされており、接待・供応・慰安・贈答、その他これらに類する行為のために支出する費用のことです。得意先・仕入先をはじめとして、その他事業に関係があるすべての相手が対象となります。交際費は、事業遂行上必要なためその費用性は認められていますが、経費として認められない場合もあります。無制限に認めることは社会モラルの面からも問題があるため制限されており、資金力を背景に交際費を使うことで中小規模の法人よりも優位に立とうとすることを抑制するため、大規模の法人の方が厳しくなっているのです。具体的な制限の区分は次の通りです。
①資本金・出資金1億円以下の法人
交際費の支出額の600万円以下の10%と600万円を超える部分の全額が損金不算入になります。
②資本金・出資金1億円を超える法人
交際費の支出額が全額損金不算入で、税計算上の損金にはなりません。
※平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度から、定額控除限度額800万円の全額が損金算入となります。
法人の交際費のうち「1人あたり5,000円以下の飲食費」については、一定の条件を満たせば交際費から除外できることになっています(平成18年度税制改正)。これは法人には有利な規定なので、以下のポイントを押さえておきましょう。
①相手先、人数、目的等の記載が必要な場合
1人あたり5,000円以下の飲食費であることを明確にするため、年月日、相手先、場所、参加者の氏名、飲食目的と内容などを領収書や支払い証明害を使い記載する必要があります。
②5,000円以下であること
5,000円を超えると、その費用すべてが通常の交際費となります。
③接待のための飲食費であること
法人の取引先などでなければならず、自社の役員や従業員の場合には交際費にはなりません。また、タクシー代などの飲食費以外は適用できません。
④一店舗ごとであること
1回の接待で2軒の飲食店に行っても合算する必要はなく、1店舗ごとの1人あたりの計算となります。ただし、2軒が連続する一体の行為として認識されると、通常の交際費となります。

医師の概算経費計算について説明してください

 

社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合は、確定申告書に「社会保険診療報酬にかかる損金算入に関する申告書」の記載があれば、概算経費が認められます。社会保険診療報酬の範囲としては以下が挙げられます。
①健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、私立学校教職員共済法、地方公務員等共済組合法、国家公務員共済組合法、身体障害者福祉法、母子保健法、児童福祉法、戦傷病者特別援護法、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定に基づく 、療養、更生医療、養育医療、育成医療、療育または医療の給付
②出産扶助のための助産、介護扶助のための介護、あるいは生活保護法の規定に基づく医療扶助のための医療
③結核予防法、麻薬および向精神薬取締法、感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律、精神保健および精神障害福祉に関する法律の規定に基づく医療
④老人保健法の規定に基づく医療
⑤介護保険法の規定によって居宅介護サービス費もしくは居宅支援サ一ビス費を支給される被保険者に係る指定居宅サービスのうち、当該居宅介護サービス費等の額の算定に係る当該指定居宅サービスに要する費用の額として同法の規定に定められた金額に相当する部分、または同法の規定によって施設介護サービス業を支給するとされる被保険者に係る介護保険施設サービスもしくは指定介護療養施設サ一ビスのうち、当該施設介護サービス費の額の算定に係る当該介護保険施設サービスもしくは指定介護療養施設サ一ビスに要する費用の額として同法の規定に定められた金額に相当する部分
自由診療割合は、自由診療収入/総診療収入×調整率で算出します。調整率は、内科、耳鼻科、呼吸器科、皮調科等で85%、眼科、外科、整形外科で80%、産婦人科、歯科で75%となっています。措置法26条の概算経費における社会保険診療報酬の金額 (基金事務所からの振込金と窓口収入の合計)と概算経費率の関係は次のようになっています。
2,500万円以下の部分     72%
2,500万円超〜3,000万円 70%+50万円
3,000万円超〜4,000万円 62%+290万円
4,000万円超〜5,000万円 57%+490万円
なお、改正によって社会保険診療報酬の概算経費特例に総収入金額の上限が定められたため、総収入金額が7,000万円を超えるものは特例の対象外となっています(法人は平成25年4月1日以降に問始する事業年度から適用、個人は平成26年分以後の所得税について適用)。

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