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一人医師医療法人について説明してください
昭和60年の医療法改正後は、常勤の医師が1人または2人で診療所を開設している医師でも医療法人を設立することができるようになりました(改正前の医療法人は、病院または常勤の医師が3人以上の診療所を開設している法人に限定)。この法人が一人医師医療法人であり、医療法上は設立、運営、権利および義務に関して何も区別はありません。子供に事業承継を考えている、診療所の社会的信用を高めたい等の場合に、個人診療所から一人医師医療法人への移行が有効なことがあります。しかし、交際費として損金に算入できる金額に限度があるなどのデメリットもありますし、経営状況によって判断も異なるので、個人移療所を一人医師医療法人にした場合の税額の比較など税理士に相談しましょう。
役員に関する見直しのポイントは、何か?
医療法改正に伴い、以下の項目の変更があります。
(Ⅰ)役員(理事及び監事)の任期。
(Ⅱ)監事の職務。
(Ⅲ)役員の補充。
<解説>
(1) 監事の職務
医療法人における監事は、法人を監査する重要な機関となります。民法の規定を、これまでの監事の職務については準用している。ただ公益性の高い医療法人運営の適正管理・監督するために、その職務において医療法に明記することになった。
(2) 役員、つまり理事あるいは監事の任期
「医療法人の内部管理体制の明確化」として、医療法人の運営を行う理事と業務・財政状態を管理・監督する監事について、医療法改正に伴い、新たな規定が設けられることになった。
実は役員の任期は、旧医療法において、明確には決まっていなかったが、モデル定款第20条第一項である「役員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。」というものが存在していたため、多くの医療法人がこの規定を利用していた。
ただ2007年4月の改正により役員の任期は2年を超えることが不可能となった(再任は可能です)関係で、定款の変更が、2年未満の任期を採用した医療法人にとって必要となる。
また法律が施行された際に施行日現在の役員の任期が問われることになるが、施行日は関係することなく、その役員の残任期間が任期となる。
(3) 役員の補充
理事又は監事の定数の1/5を超える者が欠けた時は、1ヶ月以内に補充しなけれならない。
監事の業務内容の改正点とは、何か?
監事の職務について、医療法改正前は民法59条の規定を準用していた。医療法に監事の職務が、医療法改正により明記された。このような改正が行われた理由は、監事の職務内容を明確化することで、経営基盤の強化を図り、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を強化するためと考えられる。
<解説>
医療法改正前の職務内容は下記の通りである。
(1) 財産の状況または業務の執行につき、不整の廉あることを発見したときは、これを総会または都道府県知事に報告すること。
(2) 前号の報告を為すため、必要があるときは総会を招集すること。
(3) 法人の財産の状況を監査すること。
(4) 理事の業務執行の状況を監査すること。
医療法改正により、職務内容が下記の通り明記されました。
(Ⅰ)医療法人の財産の状況を監査すること。
(Ⅱ)医療法人の業務を監査すること。
(Ⅲ)医療法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告署を作成し、当該会計年度終了後3月以内に社員総会又は理事に提出すること。
(Ⅳ)(Ⅰ)又は(Ⅱ)の規定による監査の結果、医療法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは定款若しくは寄付行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを都道府県知事あるいは社員総会若しくは評議委員会に報告すること。
(Ⅴ)医療法人の業務又は財産の状況について、理事に対して意見を述べること。
社団たる医療法人の監事にあっては、(Ⅳ)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集すること。
(Ⅵ)財団たる医療法人の監事にあっては、(Ⅳ)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集すること。
(Ⅶ)社団たる医療法人の監事にあっては、(四)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集しなければならない。
基金拠出型法人と経過措置型法人の違いとは、なにか?
2007年4月1日の新医療法施行後に通常設立される医療法人の形態をいい、基金拠出型法人は持分の定めがないことが特徴となる。一方、従来の法人とは、2007年3月31日以前に設立された、持分の定めのある形態の医療法人をいう。
決算において作成する書類及び提出期限とは、何か?
決算において、医療法人が作成しなければならない書類は、財産目録、貸借対照表、事業報告書、損益計算書(以下「事業報告書等」)となる。
・ 会計年度終了後2月以内に、事業報告書等は、作成しなければならない。
<解説>
(1) 事業報告書の記載事項
事業報告書には大きく、(一)「事業の概要」、(二)「医療法人の概要」の2点が記載されます。
(一) 事業の概要
「事業の概要」には、「収益業務」「附帯業務」「本業業務」の概要の他、「当該会家年度内に社員総会あるいは評議員会で議決あるいは「同意した事項」等が記載されることになる。
(二) 医療法人の概要
「医療法人の概要」には、医療法人の「事業所の所在地」「設立登記月日」「名称」「設立許可年月日」そして「役員及び評議員」が記載されます。
「役員及び評議員」には役員の種別(理事、監事、評議員、理事長)、氏名、職務等が記載されるが、社会医療法人、特別医療法人そして特定医療法人を除き、医療法人は記載しなくても差し支えない。「役員及び評議員」の欄は、一般の医療法人についてのみ記載しなくても問題ない。
(2) 事業報告書等の作成
医療法人の透明性の確保を図るという目的から、医療法人は、医療法改正により、毎会計年度終了後2ヶ月以内に事業報告書、貸借対照表、損益計算書、財産目録、その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)の作成が必要となった(医療法51条)。作成された事業報告書等は、理事から監事に提出されることになる(医療法51Ⅱ)。
監事は監査をし、監査報告署を作成することになる(医療法46の4Ⅲ三)。
(3) 都道府県知事への届出
社会医療法人を除いた医療法人は、次に掲げる書類を、毎会計年度終了後3ヶ月以内に都道府県知事に届け出なければならない。
(届出が必要な書類)
1、 監事の監査報告署
2、 事業報告書等
この規定に違反して都道府県知事に届出を行わなかったり、あるいは、虚偽の届出をした場合において、20万円以下の過料に処せられる可能性があるので、留意しなければならない。
今回の第5次医療法改正が行われましたが、その中での医療法人の概念について変わった点は?
A. 平成19年4月1日から、医療法が改正されました。いわゆる第5次医療法改正といわれている改正です。今回の改正により医療法人の概念については、「非営利性の徹底」、「透明性の確保」、「効率性の向上」、「公益性の確立」、「安定した医業経営の実現」というこれらを根幹とした改善を目的としている医療法人の改正が行われることになりました。
解説
今回の医療法改正には6つのポイントがあります。
1. 解散時に医療法人が有している残余財産の帰属先についての改正
「持分の定めがある社団医療法人に関しては、解散をした時において医療法人が残余財産を有している場合には、その解散時において出資の持分に基づいて残余財産の分配を受けることができる」という規定がありました。
この規定により「非営利性を維持できない」つまり、残余財産の分配が配当に当たるという指摘を受けました。
そのために、新制度によって設立された基金拠出型医療法人は、残余財産の分配先を出資者から国や地方公共団体などの公共的な組織に配分することになりました。
2. 社会医療法人の創設
「社会医療法人」が創設されることになり、公共性の高い医療の提供を行うことができることになりました。この社会医療法人の創設については、離島や僻地での医療の充実や、救急・災害時への対応の強化を図る目的があります。
他の法人と違い、社会医療法人は「一定の収益事業を行っても良いこと」「医療法人債の発行や募集が可能」という点が特徴です。
3. 管理体制に見直しと強化
医療の質に対するボトムアップは当然のこと、運営については透明性が高いことが、法的にも検証可能なことが義務付けられています。
そのために、理事・監事の任期や監事の職務について明文化するとともに、事業報告書や監査報告書の作成についても必須事項として加えられることになりました。さらに、都道府県に提出された事業報告書等については、信頼性の検証を行う必要性から閲覧に関する規定が新たに設けられることになりました。
4. 自己資本比率の規定の廃止
今までの医療法人については「自己資本比率が20%以上であること。」この規定がありましたが、新制度下では、この自己資本比率の規定が廃止されることになりました。
5. 事業報告書等の強化
医療法人ついては、毎年の会計年度が終了後、2ヶ月以内に事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書などの作成が義務付けられました。この作成した書類等は、理事から監事へと提出されます。監事の監査を受けることが必要になりました。
6. 附帯業務の拡大
医療法人については、病院としての機能だけではなく、有料老人ホームや高齢者用の住宅の設置などの、附帯業務を行うことを認められることになりました。
医療法制定:昭和23年
第1次医療法改正:昭和61年
第2次医療法改正:平成4年
第3次医療法改正:平成9年
第4次医療法改正:平成13年
第5次医療法改正:平成19年