出資持分の相続対策について教えてください

 

一般的に出資持分の評価は高額となる場合が多く、後継者含め相続人に対しての相続税の影響が大きくなるため、出資持分のある医療法人の理事長にとって出資持分の後継者への承継は重要な課題です。したがって、後継者含め相続人の負担する相続税がどれくらいの金額になるのかを事前に把握し、相続税対策を長期的に検討することが大切です。理事長個人の相続財産・債務の全体像を把握した上で、相続税納税資金の有無やその必要額を確認し、後継者含め相続人へどのように財産を分割するのかを検討したり、事前確認をおこなったりします。
相続財産は相続税評価額によって評価しますが、一定の要件を満たした土地である場合は「小規模宅地についての相続税の課税価格の計算の特例」という制度により、最高80%の評価減を適用できます。また、理事長からの医療法人への貸付金(医療法人にとっては借入金)は理事長個人の相続税財産となり、出資持分は次期後継者が承継していくと考えられるので、理事長個人の相続財産のうち出資持分がどれくらいの評価額になるかを把握することは重要です。最後に、相続税納税資金の確保、後継者以外の相続人に対する分割財産を確保できるのか事前確認をしましょう。
医療法人の理事長の相続を考えた場合、医療法人の出資持分は理事長の相続税財産のうち最も重要な財産のひとつです。その評価は相続時点での評価額となりますが、医療法人は配当金を出すことが法律上禁止されているため、長期間利益が出ている法人は法人内部に利益が留保し、出資持分の評価が設立当初に出資した金額を大きく上回ることがあります。そして、出資持分の評価が高額になり、後継者に医業承継財産が集中した場合には、出資持分は換金性がないため次期後継者となる相続人の納税資金が不足することも考えられます。したがって、次期後継者へのスムーズな事業承継を行うためには、まずは現状における医療法人の出資持分の評価をして、次期後継者に与える相続税の負担がどれだけの金額になるのかをシミュレーションしましょう。
出資持分が高額になっている場合、後継者には多額の納税が発生することが想定されます。したがって、事前に出資持分の評価の引下げを図り、持分の一部を後継者に移転させることによって相続財産自体を理事長から切り離すことや、どのようにして納税資金を確保できるのかを検討することが大切です。出資持分の評価の引下げで代表的な方法としては、理事長の勇退による退職金の支払が考えられます。退職金を支払った時等、多額の経費が発生する時には法人の純資産が減少するため持分の評価は下がります。そのタイミングで出資持分を後継者に移転するとよいでしょう。移転の方法としては譲渡と贈与の2つがあります。納税資金の確保において、すでに後継者が医療法人の理事等である場合には、不相当に高額な役員報酬とならない範囲で、ある程度将来の納税資金を意識した役員報酬を設定しましょう。その他には生命保険を活用して、理事長に相続が発生した際に医療法人が遺族(後継者)に支給する死亡退職金を納税資金とする方法などもあります。

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