今後の基金拠出型医療法人のポイントは、何か?
基金拠出型医療法人のポイントとしては、次の五点が上げられるといえる。
(Ⅰ)基金を変換するときに利息を付すことは不可能となっている。
(Ⅱ)基金の拠出者は拠出額よりも多い額の変換を受けることが不可能となっている。
(Ⅲ)基金の返還は、貸借対照表上の純資産額から基金総額や資本剰余金等を差し引いた金額が上限となっている。
(Ⅳ)金銭以外の財産の拠出については、拠出時の価額に相当する金銭で返還する。
(Ⅴ)解散時に払い込み拠出額を超える残余財産の帰属先は、国等に限定されている。
<解説>
基金拠出型医療法人とは、「基金」の制度を採用した医療法人と定義されている。
ここで「基金」とは、医療法人の財産として拠出されるものであり、法人を運営して行くための原資となるものと定義されている。具体的には、金銭の他、土地や建物、診療設備等の医療法人を設立するために拠出されたものをいう。「活動の原資となる基金を調達し、剰余金の分配を目的としない性格を維持しながら、財産的基礎の維持を図るための制度」と、このような基金制度は、いわれている。
2007年4月1日以降に設立される医療法人社団については、すべて出資持分の定めは存在せず、搬出者に、解散時の残余財産のうち払込拠出額を超える部分については、帰属しないということに決められる。
これは医療の非営利性を高めるという厚生労働省の指導によるものだと考えられる。
注意しなければならないのは、今までは医療法人の残余財産の帰属先に制限はなかったため、出資者個人を帰属先にすることで、結果的に個人の持分に、法人の含み益も含んだ部分がなっていたが、今後は、残余財産から出資持分に応じた額の払戻しを受けることが不可能になってしまう。すなわち、搬出者には医療法人を設立したときの拠出額部分しか変換されないということになってしまう。さらに、この拠出金は債権のように利息のつくものではないため、金銭で拠出した場合についても、金銭以外の財産で拠出した場合についても、その当時の価額で返還される事になっている。
基金を変換するときにも留意する必要があるといえる。
まず、定時社員総会の決議をしなければならず、「代替基金」として、当初の基金に相当する金額を計上し、返還しても基金の総額が目減りしないようにしなければならず、留意が必要といえる。
簡単にいえば、当初の基金部分のみの純資産が100あった場合においては、基金返還時に代替基金として追加で100計上し、純資産が最低でも200あれば返還をすることが可能になる。(このあたりの計算については会計士・税理士等の専門家に確認する方が確実なため、相談をしてみても良い)尚、この代替基金については基金が返還されないとしても、基金の総額が減少しないように設けられた制度であるため、任意に取り崩す事も不可能ということになる。
残余財産の帰属先が制限されたことについては、解散時に都道府県知事の認可を受けて、国若しくは地方公共団体、特定・特別医療法人あるいは持分のない一般医療法人に帰属するものと決められていた。ただし、定款・寄付行為に残余財産の帰属先の規定がない場合は国庫に帰属されることになります。今後は開業した当初から、解散時の残余財産の帰属先をどこにするのか検討する必要があるといえる。