医療法人設立のデメリットについて説明してください
個人では、従業員が5人未満である場合には必ずしも社会保険の加入義務はありませんが、医療法人の場合には従業員の人数に関係なく強制加入となります。社会保険はその約半分を医療法人が、残り半分を従業員が負担する仕組みになっているので、経営上のコストは上昇することとなります。また、個人では全額損金としていた交際費(飲食・ゴルフ接待等)が、医療法人では一部損金にすることが不可能です。出資金が1億円以下の医療法人の場合、上限600万円を対象にその90%の540万円までしか損金として認められず、600万円を超える部分については一切損金になりません。この限度額が多いか少ないかはそれぞれの事情によると思いますが、交際費の状況も医療法人検討事項の一部として勘案しなければなりません。ただし、中小法人の交際費課税の特例の拡充により、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度において支出した交際費については、限度額が800万円となりその全額が損金として算入することが可能です。
医療法人では剰余金の配当が禁止されており、院長個人への貸付も制限されています。したがって、収益が拡大した場合の利益処分や院長個人の急な資金繰りに柔軟に対応することができません。さらに、法務局に役員変更等の登記が都道府県知事に決算書類の提出が義務づけられるなど必要な事務処理が増えますし、都道府県知事による立入検査等の指導が強化されます。医療法人設立には多くのメリットがありますが、それらを有効に享受できるかどうかは医院個々の経営状況によって異なります。医療法人設立のデメリットの部分も考え合わせて総合的に検討しましょう。
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