医療法人の解散について説明してください
医療法人は下記の事由が生じた場合に解散となり、その際の残余財産は払込済出資額に応じて分配されます(旧法)。
・目的たる業務の成功の不能
・社員総会の決議
・社員の欠亡
・破産手続開始の決定
・他の医療法人との合併
・設立認可の取消
平成19年4月以前(旧法)では、法人の持分を売却することで法人財産であるところの医療機器やカルテなど、すべての資産負債を譲渡することが可能です。値段は医療機器などの資産から未払金などの負債を差し引いた純財産のほか、一般的に診療所の収益力も加味されるので今まで培ってきた暖簾(診療所の営業権)も無駄にはなりませんし、新しく始める方にとっても開業当初の収入不足に悩まされることはありません。
法人の持分である非上場の株式等を売却した場合、売却価格から出資額または購入価格を差し引いた金額を譲渡所得として申告します。譲渡所得は他の所得とは別の申告分離課税になり、所得税と住民税を合わせて20%の税率となります。また、法人売却にともなって役員を交代するので、先に退職金の支給を受けておくのもよいでしょう。退職金の支給によって売却価格が下がるうえに、退職所得(分離課税)は税務上有利な設定なので検討するべきです。
平成19年4月以前(旧法)では、買い手がいないときには知事の認可を得て法人の清算手続きをとることになります。つまり、個別の財産を一つ一つもしくは一括して売却して未払金などの負債は返済し、残額を各出資者に持分に応じて分配することになります。出資額限度法人の場合には出資額を限度としての払戻しであり、解散により残余財産の分配を受けた出資者は、交付を受けた金銭が法人の資本金等の額を超える際にはその差額を配当所得として申告しなければなりません。この場合、配当所得は他の所得と合算して計算して所得税と住民税が算出されます。通常は配当所得よりも退職所得の方が有利になることが多いので、先に役員退職金の支給を受けておいて退職所得として申告することも検討が必要です。解散や譲渡を検討している場合は残余財産のことを考慮して、役員報酬や退職金を適切に設定するなど計画的に運営していくのが大切です。
ただし、平成19年4月以降に認可された基金拠出型の医療法人では、非営利性の観点から財産の分配ができなくなりました。これまでは、収益が出た法人を利益の分配目的で意図的に解散させるという、医療法人の根本にある非営利性を否定する行為を排除できない問題がありました。そのため平成19年4月以降に設立された医療法人では、解散時の残余財産は国や地方公共団体、あるいは他の医療法人等に帰属させることとなったのです。今後は、後継者が決まっていない医療法人での設備投資や資産運営など、慎重に検討しましょう。