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医療法人のリゾート会員権について説明してください
リゾート会員権などレジャークラブの入会金は、資産計上または給与として取り扱い、原則的に資産計上した入会金は償却することができません。ただし、会員としての有効期間が定められており、脱退時に入会金相当額の返還が約束されていない場合は、有効期間での償却が可能です。特定の職員しか利用できないなど、個人が負担すべき場合は給与扱いとなり、所得税が課されます。さらに、その特定の職員が役員に限定される場合、定期同額給与に該当しないものとして役員賞与となり、法人の費用(損金)にはなりません(源泉所得税の対象とはなりますし、個人の所得として所得税も課税されます)。
リゾート会員権などレジャークラブの年会費等については、用途に応じて福利厚生費・給与・交際費のいずれかで取り扱い、職員が一律に利用できる状況であれば福利厚生費として費用計上できます。この場合、施設の利用方法等を定めた利用規程を作成して職員に周知させ、利用状況を記載したノートを作るなど管理体制を整えておきましょう。特定の職員しか利用できない場合は、利用できる特定の職員の給与として扱って所得税が課されます。その特定の職員が役員で定期同額給与にあてはまらない場合は、入会金同様で費用扱いは不可能です。得意先等の接待に利用している場合は交際費となり、出資金の額によりその一部または全額が費用になりません。
利用を目的にリゾート会員権を取得した場合、経理処理上、その費用は経費としては扱われずに資産として計上することになります(有効期限つきのものであれば経費となる)。名義変更料や会員権業者へ支払う手数料など、一見、資産とは思えないようなものも、資産取得のための費用なので資産に含まれると考えられます。法人が入会したリゾートクラブの入会金は法人の資産として計上されますが、その性質上、時の経過によって価値が減少するものではないので減価償却が認められません。ただし、会員としての有効期間があるリゾート会員権で退会時に入会金が返還されない場合は、入会金の価値が時の経過とともに確実に目減りしていくので、ゴルフ会員権のようにずっと資産計上することは不可能です。そのため、有効期間を償却期間とし、繰延資産として入会金を償却することができます。
リゾート会員権を購入時よりも安い価格で譲渡した場合は、その差額を譲渡した日が属する事業年度の損金に算入することが可能です。法人で購入したリゾート会員権の会員権代金や登録料、名義変更料といった購入時の費用の大半は資産として計上し、経費として計上するのは年会費程度となります。医療法人の福利厚生は役員だけが利益を得る、または得をすることを考えずに、社員すべての平等性を目的としましょう。
医療法人の低額譲渡について説明してください
売り手である法人には、売却価格がいくらであっても、時価で売却したものとして法人税がかかります。例えば、取得価額400万円(時価1,200万円)の土地を700万円で売却した場合には、売却価格から取得価格を差し引いた300万円ではなく、時価から取得価格を引いた800万円が売却益となります。また、時価と実際の売却価格の差額である500万円は、法人と個人の間に雇用関係等があれば賞与あるいは役員賞与となり、雇用関係がなければ寄附金となります。買い手である個人には、購入価格と時価との差額に所得税がかかり、法人と個人間に雇用関係等があれば給与所得、雇用関係がなければ一時所得として申告します。売り手である法人には、法人から個人への低額譲渡の場合と同様に、時価で売却したものとして法人税がかかります。買い手である法人は、購入価格がいくらであっても、時価で買ったものとして受贈益が法人税としてかかります。
医療法人の社宅の取扱いについて説明してください
医療法人が所有する社宅については、減価償却費や借入金利、維持管理費等を法人の経費とすることが可能です。役員社宅の家賃は、税務上、床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅に分けて基準額が定められており、その基準額を下回らなければ経済的利益の問題はないです。小規模な住宅とそれ以外の住宅では、通常の賃貸料の額に大きな差が生まれます。医療法人が役員用の社宅を建て、それを理事長が借りて家賃を支払う形をとると、個人で自宅を所有する場合と比較して以下のようなメリットがあります。法人化には、法人自身の節税だけでなく理事長個人の所得税軽減効果がありますが、個人が住居を取得する場合に認められる住宅ローン減税等は受けられません。
・減価償却費、借入金利を法人の経費に算入できる
・相場より安く借りて、理事長の所得税を節税できる
・公租公課、維持管理費や修繕費を法人の経費に算入できる
税務上は、小規模な住宅、それ以外の住宅および豪華社宅は、それぞれ通常の賃貸料の額の取扱いが定められています。その定めの範囲で賃貸料を徴収すれば、課税される経済的利益はないものと判断されますが、その塞準額より低い家賃設定をしていると家賃との差額が給与とみなされ、課税の対象となります。社宅の敷地の固定資産税の課税標準額が、住宅用地に対する課税標準の特例措置で軽減されると、通常の賃貸料の額もそれを基に計算されます。課税標準は地域によって毎年修正されることもあるため、その場合には通常の賃貸料の額は年度毎に算定しなければなりません。住居のある場所にもよりますが、小規模住宅の通常の社宅料は月額数万円程度となることが多いので税務上メリットとなります。
①小規模宅地(木造132㎡以下、木造以外99㎡以下)
その年度の家屋の固定資産税の課税標準額× 0.2%+12円×(その家屋の総床面積(㎡)÷3.3㎡)+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%=通常の貨料(月額)
固定資産課税標準額は、地域によって時価と大きな開きがある場合もあるため注意しましょう。
②上記①以外の住宅
{その年度の家屋の課税標準額×12%(木造家屋以外の家屋について)+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%}×1/12=通常の賃料(月額)
医療法人の慰安旅行について説明してください
医療法人が役員や従業員のレクリエーションのために会食や旅行等の費用を負担した場合、それが社会通念上、一般におこなわれている範囲であれば福利厚生費として計上することができます。ただし、慰安旅行については次の要件を満たす必要があります。
・旅行期間が4泊5日以内であること
・参加する従業員の割合が50%以上であること
この要件を満たしていてもあまりに豪華である、法人負担が高額であるという場合には福利厚生費として認められず、1人当たりの法人負担によって給与所得とみなされることがあります。慰安旅行の具体例は旅行にかかる費用が対象となります(鉄道や航空運賃、ホテルや旅館の宿泊費、食事代)。一般的に法人負担分は福利厚生費として全額損金算入が認められますが、場合によっては交際費や給料、役員賞与扱いになることもあります。社会通念上、一般的と認められる範囲の慰安旅行の費用は福利厚生費となり、旅行に参加した人の給与課税(源泉徴収)をしなくてもよいです。福利厚生費として認められる条件は、以下の通りです。
1.旅行費用の法人負担分が少額であること
旅行自体は豪華なものでも、法人負担分が10万円程度であれば範囲内となります(参考:平成22年国税不服審判所判例、国税庁タックスアンサー#2603)。法人負担分が10万円で、従業員負担分が全くないような場合も認められます。つまり、法人負担が10万円を超えなければ許容範囲と考えられます。
2.旅行中の行事が一般的であること
1泊2日の格安な旅行であっても、全員参加のゴルフ大会が催されるような場合は一般的とはみなされません。
3.旅行の期間は4泊5日以内
海外旅行の場合には機内泊は除外し、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
4.従業員全員を対象とし、参加人数が全体の半分以上であること
工場や支店ごとに行われる旅行の場合は、それぞれの職場ごとの人数の半分以上が参加する必要があります。
5.自己都合で参加を見合わせた者に金銭を支給しないこと
上記すべての条件を満たしても、次のような場合は従業員のレクリエーションを目的とした旅行とはみなされないため、役員賞与、給与あるいは交際費として処理されます。
・役員賞与となるもの
役員だけで行う旅行
・役員賞与、給与手当となるもの
実質的に私的旅行と認められる旅行や金銭との選択が可能な旅行
・交際費となるもの
取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
医療法人の海外研修の留意点について説明してください
海外研修旅行や海外出張の費用は、法人の業務に直接必要と認められる場合、研修費や旅費交通費等として経費扱いになりますが、直接必要でない場合は出張者や旅行参加者の給与扱いとなります。その費用に、法人の業務に直接必要な部分と、直接必要ではない部分が混在する場合には、直接必要でない部分の費用のみ参加者の給与となります。海外慰安旅行の費用は、以下の要件をすべて満たす場合に限り福利厚生費等とみなされ、参加者の給与にはなりません。医療法人では、医師が海外で開催される学会等に参加することは、知識や技術を習得して質の高い診療業務を営めることにつながるため重要です。学会等の費用は損金に算入することが可能であり、参加のための交通費、宿泊等の経費で通常必要と認められる額についても計上できます。
・外国での滞在日数が4泊5日以内
・旅行の参加人数が全体の人数の50%以上(工場や支店単位の場合は、それぞれの職場ごとの人数の半数以上)
・会社負担分が10万円程度(会社負担分が10万、従業員負担分がゼロでもよい)
研修とは関係のない観光費用は経費となりませんが、学会や海外研修の後に観光を行ってから帰国する場合、観光の後でも帰国費用は損金に算入することが可能です。海外渡航の直接の理由は学会や海外研修の業務の遂行ですから、現地までの往復旅費は業務遂行上必要なものとして取り扱います(参考:法基達9-7-9)。なお、事業の遂行上直接必要と認められる旅行と、認められない旅行とを併せて行った場合、事業の遂行上直接必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比率により、往復旅費を按分することとなります。海外研修では個人的な支出が出やすく、税務調査では学会の日程表や領収書等が確認されるので無くさないようにしましょう。
ゴルフ会員権と会費について説明してください
ゴルフ会員権の入会費は資産に計上され、年会費は交際費等として経理処理されます。このとき、ゴルフ会員に対する入会金が法人のその業務遂行上必要かということに注意が必要です。業務遂行上必要な場合とは、接待などの際には支出した入会金相当額を資産として計上し、特定の役員等のための際には、入会金相当額を特定の役員または従業員に対する給与として取り扱います。法人がゴルフクラブに支出する年会費や年極めのロッカー料金、その他の費用は、入会金が資産計上されている場合は交際費としてみなされます。また、入会金が給与としてみなされている場合は、年会費等も給与として取り扱われます。法人会員として入会した後に、その法人の名義人を他の者に変更する場合の名義書換料は、入会金が交際費として取り扱われている際には入会金として、給与として取り扱われている際には給与としてみなされます。また、プレイ料金はその実質にしたがって、交際費または給与として取り扱われます。
役員退職金について説明してください
役員に対する退職金については、役員の勤続期間や退職の事情、同種同規模法人における役員退職金の支給状況を考慮し、以下のような計算式で算出します。
①功績倍率法
退職金=退職前の報酬月額×勤続年数×功績倍率
②1年あたり平均額法
退職金=類似比較法人の1年あたりの退職金平均額(※)×勤続年数
(※)①比較法人の役員退職金÷在職年数
②①/比較法人数
一般的にこの計算式であれば、相当とみなされ損金算入が可能であり、不相当に高額な部分は損金に算入されないので、適正な役員退職金を算出しましょう。
役員退職金の損金算入時期は、社員総会の決議等により、その額が具体的に確定した日の属する事業年度となります(確定日基準)。また、医療法人がその退職金の額を支給した日の属する事業年度において、その支給した額につき損金経理した場合には、その事業年度の損金として取り扱うことも可能です(支給日基準)。つまり、社員総会で金額を確定したとしても、実際に支給した日に損金経理すれば、その事業年度の損金として取り扱われます。なお、役員に対する退職金をその額が具体的に確定した日以後の事業年度に支給した場合に、その支給した額をその事業年度で仮払金等として経理処理を行い、その後の事業年度においてその仮払金等を損金経理により償却しても、損金の額に算入することは不可能となります。
また、退職金を支給した月の翌月10日までに源泉所得税を納付しなければならず、源泉所得税を納期限までに納めない際には、不納付加算税と延滞税が課されます。不納付加算税は原則10%ですが、税務署から通知などがくる前に自主的に納付すれば5%となります。なお、ある一定の要件を満たして延滞に正当な理由があったと認められれば、不納付加算税が免除されることもあります。役員の退職金の支給額を主観で判断するのはトラブルの元なので、きちんと役員退職金規定を定めましょう。
修繕費について説明してください
修繕費とは、減価償却資産の価値をできるだけ維持するためにおこなう、復旧程度の修理・改良等の費用であり、支出した事業年度の損金に算入します。修理・改良等をおこなうことで資産の価額が増加した、その使用可能期間が長くなったという場合には、価値が増加した分あるいは使用可能期間が延長した分を資本的支出とみなします。資本的支出は一事業年度の損金には算入せず、固定資産の取得価額として減価憤却の手続によって費用化します。修繕や改修の費用を修繕費とするか資本的支出とするかの判断は難しく、これを形式的に判断できるように取扱いを簡素化する通達が出されています。それによると、明らかに資本的支出に当てはまる場合を除き、一の資産に対して修理・改良等のために支出された金額が60万円以下であるか、前期末における資産の取得価額の10%程度以下であれば修繕費、それを超えれば資本的支出となります。
法人がその有する固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の通常の維持管理のため、またはき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となります。例えば、次に掲げるような金額が修繕費に該当します。
・建物の移えいまたは解体移築をした場合(移えいまたは解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く)における、その移えいまたは移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。
・機械装置の移設に要した費用(解体費を含む)の額。
法人がその有する固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、またはその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となります。例えば、以下のような金額は原則的に資本的支出に該当します。なお、建物の増築や構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たります。
・建物の避難階段の取付等、物理的に付加した部分に係る費用の額
・用途変更のための模様替え等、改造または改装に直接要した費用の額
・機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち、通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
従業員への食事支給について説明してください
役員や従業員に支給される食事は、次の2つの要件を両方とも満たすことで給与として課税されません。
1.役員や従業員が食費の半分以上を負担していること
2.実際の食費から役員や従業員の負担額を差し引いた額が、1ヶ月当たり3,500円以下であること
この2つの要件を共に満たしていない場合、支給した食事の価額は現物支給の給与となり、課税の対象となります(役員や従業員が自身で負担した金額は、課税の対象となる食費には含まれません)。例えば、1ヶ月当たりの食事の総額が5,000円で、役員や従業員が負担している金額が2,000円の場合、1の条件を満たしていないので食費の5,000円から役員や従業員が負担した2,000円を引いた3,000円が給与となり、課税対象となります。このときの食事の価額は、仕出し弁当などを支給した場合には当業者に支払った金額、社員食堂の場合には、食材費や調味料代など食事を作るために支払った金額の合計となります。現金で食事代を補助する場合は全額が給与として課税されますが、深夜勤務者に夜食の支給ができない環境の場合には、1食当たり300円以下の金額を支給することが認められています。また、残業や宿直や日直をする者に食事を支給しても給与として課税されません。
店屋物や仕出しなど、食事を他から購入する場合には購入価額がそのまま食事の価額となり、法人が運営する社員食堂で調理をおこなっている際には、食材や調味料など調理に直接かかわる費用が食事の価額となります(水道代やガス代は間接費用なので食事の価額には含まれない)。また、社員食堂であっても委託業者が食材の調達から調理までの一切を任されている場合には、他からの購入に準じて計算します。宿日直や残業など、通常の勤務時間外に仕事に従事した者に対して支給する食事については、全額を法人で負担しても給与扱いにはならず課税もされません。ただし、残業食であっても食事代を金銭で支給したときには、通常の勤務時間内の食事と同じ扱いとなり、給与手当として課税の対象となります。出前をしてもらった店の領収書など、現物支給であることを証明するものは忘れず保存しておきましょう。また、交替制勤務者の夜間勤務や守衛のように深夜であっても、それが通常の勤務時間である場合などは、食事をとった時間帯に関わらず残業食には当てはまりません。
医療法人の人件費について説明してください
個人事業の場合には超過累進税率が適用されるため、所得が上がるほど税率も上がり、高額な所得税と住民税を納付しなければなりません。売上から経費を差し引いた金額は所得となり、直接その所得に高い税率をかけることが可能です。それに対して、医療法人化すると所得を親族に分散することや、税率を下げることが可能となります。医療法人から給与として支払いを受けた際には、給与所得控除が受けられるのでその分が節税となります。
医療法人において理事長は給与所得者となるため、役員報酬から給与所得控除を差し引いた金額が課税所得となり、給与所得控除分が節税できます。また、青色専従者だった妻が医療法人の理事に就任したときには、所得の区分は給与所得のまま変化しませんが、経営の一端を担うということでより多くの給与を医療法人から受け取ることが可能です。その分、院長は経営責任の一部が軽減されると判断して、個人診療所の事業所得より少ない報酬額に抑えるのが一般的で、所得税の累進税率構造から考えて家族トータルとしての税額が減少するため節税効果があります。親族の理事への報酬は特に繊細な問題を含むので専門家に相談しましょう。
給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じた一定の算式により計算されます。平成25年より、収入が1,500万円を超える際の給与所得控除額については、245万円の定額とすることと改正されました。これに伴い、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表・日額表)」、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」及び「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正されました。この改正は平成25年1月1日以後に支払うべき給与等について適用されています。